立川の工房祭の報告です。
このお祭りは立川市富士見町の石田倉庫という場所で催される2日間のイベントです。
元々はこの倉庫をアトリエに借りたのが芸大の学生だったことが始まりで、現在は現代美術、金工、鉄、陶芸、家具、葉画家等々様々な作家さん達がアトリエを借りているとても面白い場所になっています。そこで作家さん達がオープンアトリエをするという2日間です。
様々な飲食のブースが出店しています。その中にくろねこ軒も。
そこで去年から作家さんと飲食関係者がお互いにアイデアを出し合い、ひとつの作品を作ってお客様に提供しようという「食とアートのコラボレーション」という企画が始まりました。
くろねこ軒は現代美術の栗真由美さんと「KIRAKIRA*キッチンゼリー」をコラボしました。
さて、当日初めて見た栗さんの作品です。
今回の栗さんの作品はキッチン用品をテーマにしています。
カラフルな寒天でカトラリーが固めてあります。
ガラスのお皿に揺れる水面を壁に写した作品も静かにきらきらで美しかった。
ここであれ?エッフェル塔は?と思って頂けると話は早いです。
先日ブログでエッフェルちゃん完成間近と言ったはずなのにキッチン用品・・・。
1週間以上私の頭をエッフェル塔でいっぱいにしておきながらM.Kさん(実名は一応伏せた)から「キッチン用品に変更してください。お願い!」というメールが来ました。
く、く、栗さん、じゃないMKさん、私、エッフェル作る為にゼリエースからこんにゃくゼリーの素、寒天パパ、ありとあらゆるぷるぷる関係を集めて作って食べたのだよ。もうお腹もぷるぷるのことよ。
結局、美人は特です。栗とねこのバトルは栗の勝ち。
私も食べられるカトラリーをゼリーに沈めました。
本当は作品に近く真ん中に入れたかったのですがこれが難関でした。果汁を多く美味しく食べてもらおうとするとほんの少しのさじ加減でまったく中にいれたものが見えません。何度か試作して、ここはケーキ屋なのだから美味しくをちょっとだけ優先しました。
限界まで透明感を出し、でもフルーティーに、美味しく召し上がって頂けるゼリーを目標に作りました。
このゼリーを親子で楽しんでくださっているお客さまやフェラフェルを食べに来て下さった赤ちゃん連れのママ、そして、
にこやかな笑顔のお客様は「私の今までの人生で食べた中で一番美味しいスィートポテトでした」とわざわざ伝えにテントに戻ってきてくださったのです。この言葉が本当に私達を動かす原動力。2日間で原動力をたくさん頂きました。おかげさまで秋からのエネルギーチャージ完了、みなさん、ありがとうございました。
最初の写真のお菓子とパンの山は午後の早い時間にはSoldoutでした。
2日目は気温が上がったのでかねて準備のかき氷!発売しました。
これが面白かった。初めて使うかき氷機にスタッフ一同かかり切りの大騒ぎです。
会計係がたまらず「全員でやっちゃだめ!」と悲鳴をあげていましたが面白いんだもの。全員でやる。お祭りっぽくて楽しかったなあ。
シロップは白桃。試食したとき「うわ〜」って言ってしまったほど「桃〜!」なお味のフルーティーなかき氷でした。
こちらもあっという間に完売でした。
かき氷、もっとやりたい。シロップもいろんな種類作って大騒ぎでかきたい。
来年の夏はシロップ作りに凝りそうな予感です。
これはお隣のテントの「食堂Marumi-ya」さんのコラボメニュー、「日々の色」こちらも現代美術の宮坂省吾さんとのコラボ作品です。
野菜やお豆できれいな色が表現されていました。
店主の伊藤さんは「昨日作っている時、気が狂いそうになりました」と話していましたがとても凝った作品でした。
なにより美味しかった。
このコラボ企画、作家さんにとってはもちろん私達食の職人にとっても収入になるものではとてもなく時間がかかりエネルギーを吸われるやっかいな企画なのですが・・・。
私が一週間エッフェル塔を完璧にゼリーで抜く、という事を常に頭の片隅において何度も実験していたようにお隣の伊藤さんは寒天で色をグラデーションする、と発想してからはずっと様々な野菜や豆を使って何度も試していたのではないかと思います。
私もエッフェル塔を抜くという作業の時間、それだけを考えて集中しました。
失敗して原因を考えてそれを除き、試行錯誤を繰り返して一番理想に近い形に仕上げて行ったと思うのです。
私の場合はひとつのやり方にこだわりすぎて視野が狭くなっていて、スタッフの助言でいきなり前進出来たのです。
自分の持っている知識と技術をフルに使い、アドバイスももらってアイデアを練ったこの時間はお金では買えない貴重な時間でした。
経験を積ませてもらう、ということの大切さは今すぐ結果にはつながらないかもしれないけれどいつか必ず自分の支えになってくれると思えます。
栗さんが終了時間間際に「くろねこさーん、池谷さーん、完売した〜!」とテントに飛び込んで来てくれた時の「やった!!!」というアドレナリン大発生な感じ。
お菓子が完売した時にもかき氷がなくなった時もこのアドレナリンは出ないのだから不思議。
それはやっぱり栗さんもすごく大変な思いをして作品を作っていてその大変さ+コラボ作品の苦労が実った共感というか共同体というか、うまく言えないのですがともかく「栗さん、やったあ!」という達成感は2人で話し合って作品を決めて、そこからお互い苦労して作品が仕上がったという共同作業的な時間から生まれたのではないかしら。
一人で作ったお菓子だったらこんなには嬉しく感じられないから。
いや、去年もそう思いましたが、今年も貴重な経験をさせてもらいました。石田倉庫の住人の皆様、ありがとうございました。
そしてそして私が出掛けたあとにひたすらりんごをフォークスプーンナイフにメスで切り抜いていた2人の助手さん。Special Thanks賞です。
本当に感謝してい・・・、ちょっと。くりぬいたりんごのゴミを庭に撒き散らかして帰るな!
家に来る鳥、今の時期そんなクズは食べないから!
人生、きれいごとでは生きてはいかれない、と疲れた体にむち打って庭掃除をしながら確信した一日でした。